ポスト真実(post-truth)とは、事実が軽視され、嘘がまかり通る政治やメディアの状況を表す新語だ。イギリスのオックスフォード英語辞書が2016年の言葉に選んだことで世界的に広まった。

 本書はこの流行語を手がかりに、アメリカのトランプ現象やイギリスのEU離脱を引き起こした現代の情報社会の変容を読み解いていく。背景には「ソーシャルメディアの影響」「事実の軽視」「感情の優越」「分断の感覚」の4要素があると指摘し、欧米だけでなく日本も同様だと警鐘を鳴らす。

 最終章の著者同士の対談では、ポスト真実の時代の対処法が話し合われる。ネットの専門家として知られる津田大介氏が「現場に行って人と人同士がリアルの場でコミュニケーションすること」の重要性を強調しているのが興味深い。

週刊朝日  2017年10月6日号