高級店での食事、私は本当に味わうことができているのだろうか? 実は雰囲気にのまれているだけかも……? そんなことを反省させられた本書。食にまつわる小説である。

 主人公の紗英は「牧村紗英イート&リサーチ」の経営者。相棒の真山と、時に夫婦を装い覆面調査を行っている。業務は投資家を顧客とし、飲食関係の店や会社に星(つまり評定)をつけること。おいしい料理を食べるのが仕事なんて(しかも紗英は食べても太らない)、とうらやましくなるが、紗英の苦労は絶えない。とことん調査しなければ気のすまない彼女、飲食業界の裏事件にたびたび巻き込まれ(というか介入し?)てしまうのだった……。

 食のエンタメ小説だが、労働問題もひとつのテーマになっている。なんとも今日的である。

週刊朝日  2017年5月19号

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