中国で“ぼったくりバー”に連れ込まれる日本人観光客もいるようだが、ここ日本で中国人観光客は“ぼったくり免税店”に連れて行かれる。誘導するのは中国人の闇ガイドだ。闇ガイドの素行に詳しい日本人通訳案内士のSさんは次のように話す。
「“ぼったくり免税店”は、不当な値段をつけて中国人客に販売します。訪日客は後から『法外な値段を払わされた』と気づいて、結局『日本とはこういうところか』と不満を抱いてしまうのです」
中国人の闇ガイドは、中国人旅行者をなぜ“ぼったくり免税店”に連れて行くのだろうか。「そもそも中国人ガイドは薄給だから」ともいわれるが、中には以下のような極端なケースもある。
「中国の旅行社が『100人の訪日旅行者をタダで引き受けろ』と、日本のランドオペレーター(訪問地の手配代行者)に振るんです。このときランドオペレーターはこの仕事を“闇ガイド”に『一人当たり1万円、合計100万円で買い取れ』と丸投げする。“闇ガイド”は旅行費用と仕入れ代金(100万円)を取り返し、さらに自分の利益を叩き出すために、“ぼったくり免税店”に連れて行くのです」(日本の旅行業に詳しい経営幹部)
一方、“ぼったくり免税店”ではどんな商売が行われているのか。内部に詳しい別の人物は内部の様子についてこう話す。
「“ぼったくり免税店”では、『2000円の価値しかないものを1万円で売る』というようなことが平気で行われています。この場合、商品1個の購入に対して2000円のオーバーコミッションが“闇ガイド”に入るしくみです」
しかも“ぼったくり免税店”で買い物をさせるために、「わざと他の店で買い物する時間を与えないツアーもある」(Sさん)という。
「初めて訪日する中国人客を、同胞の中国人が騙す」という新手の商法は、中国人の間で瞬時に広がり、有象無象がここに参入した。こうして日本のインバウンド市場で“闇ガイド”に“ぼったくり免税店”“悪徳飲食店”――が跋扈し始めたのである。
2015年は「爆買い」現象のピークが見られた年だが、このとき3.4兆円の旅行消費が日本にもたらされた。しかし、「小売業界で潤ったのはごく一部だ」と言われている。それが百貨店であり、家電量販店であり、免税店だった。
免税店の中には当然“ぼったくり免税店”も含まれている。こうした悪徳免税店とタッグを組んだ闇ガイドの中には、コミッションだけで月1500万円も手にした者もいる。