日本人ガイドの説明に観光客は静かに耳を傾ける。その熱心さが伝わると、乗客も日本の文化や伝統に関心を持ち始める
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“闇ガイド”率いる一団とすれ違う。資格証もないどころか、ガイドはスマホにのめり込み、客の安全には無関心
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日本の伝統文化の解説もしっかりと伝える保田さん
日本の伝統文化の解説もしっかりと伝える保田さん

 今週、東京発の富士山日帰りバスツアーに参加した。20人の乗客は全員“中国語スピーカー”で、中国、台湾、香港、東南アジアなどからの観光客だ。定刻に走り出した観光バスで、ブレザーを着用した日本人の通訳案内士・保田誠司さん(49歳)がおもむろにマイクを手に取った。

 バスが東京タワーを通過するとその由来を、高速道路に差し掛かれば高度経済成長期の日本を解説し、八王子に差し掛かった辺りからは富士山の説明を始めた。バスが山梨県に入ると武田信玄の武勇伝と地元の食文化「ほうとう」を語る。

 保田さんは時折、ハンカチで額の汗を拭く。一所懸命なのだ。ネイティブな中国語ではないものの、「伝えよう」という気持ちが伝わるのか、乗客は皆、静かに保田さんの話に聞き入っている。

 一方で、保田さんはいくつかの注意喚起も忘れない。

「みなさん、バスツアーは団体行動です。どうか集合時間を守ってください」

「日本ではゴミは分別です。日本の街をよく観察してください。車内でもゴミは分別です。勝手に捨ててはいけません」

「温泉に入る前に、まず先にシャワーを浴びてください。温泉はプールではありませんので泳ぐのは禁止です。頭まで浸かるのもマナー違反です」

 ユーモアも交じる注意喚起に乗客も悪い気はしない。しかも、事前にこうした注意を促せば、中国人客も戸惑うことはないだろう。日本人ガイドが適切に誘導することで、マナー問題に“一定のブレーキ”がかかる一面を垣間見た。

●観光案内はそっちのけ 物売りに徹する“闇ガイド”

 日本政府は「観光先進国」を成長戦略の柱に据えているが、こうした国づくりの一助となるのが保田さんのような「通訳案内士」という国家試験にパスした有資格者たちだ。

 しかしその一方で、“闇の中国語観光ガイド”が多数暗躍している事実がある。

“闇ガイド”は、日本の旅行業界では悪名高き存在だ。正規のガイドなら車中の時間を利用して日本の伝統や習慣を伝えようとするが、闇ガイドが車中で行うのは専ら販売行為。持参した段ボールの中から次から次と商品を取り出しては、観光客に売りつけるという。乗客の安心安全は二の次、ひどい場合は、観光地で乗客を積み残して出発するケースもある。

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