国、時代を問わず、『ダービーマッチ』は特別なもの。各地域の歴史や文化が反映され、ライバルクラブに負けることは許されない。しかし、方法を履き違えるとクラブや選手に多大な迷惑をかけることは、「過去の歴史から学ぶべき部分」(F・マリノス関係者)だろう。

「威嚇・挑発行為や暴力・破壊行為をすれば、即座に処分されるのはわかるはず。近年は防犯カメラの数も激増、身元は絶対にバレる。それでも愚行をするのは、『暴れてストレス発散する』目的の輩(“フーリガン”)もいるのでは……」(Jリーグ関係者)

 贔屓クラブへの思いもあるだろうが、酒を飲んだりした“ノリ”で暴れる愉快犯も多くなっている。根底には、「日常生活で積もった鬱憤を晴らす目的」があるのだろう。

「日本経済の弱体化、そして所得格差が広がったことで生活困窮者も増えた。明るい未来が見えにくくなったことで、暴力行為に走るファン・サポーター(“フーリガン”)が増えたことも否定できない」(スポーツマーケティング会社関係者)

 欧州・南米の“フーリガン”は、「主に労働者階級の人々が鬱屈した生活の憂さ晴らし」をすることで生まれたとされる。しかし以前ほど事件・事故は多くなくなった。「社会へ強烈な不満を持っている人も少なくなっているから」と言われる。

 また各国リーグは収益向上のため、「安全・快適なスタジアム環境」を作り出すことに注力。警備体制の強化、ラグジュアリー空間の創造に取り組む。中流階級以上の人々がサッカー場に集まるようになったことで、“フーリガン”も減少したと見られる。

「Jリーグを取り巻く環境が、“フーリガン”時代の欧州・南米に近付いている。『暴れられれば良い』という発想なのか……。贔屓クラブと関係ない試合会場で暴力事件を起こして逮捕された人もいる」(Jリーグ関係者)

 7月9日、川崎フロンターレから「3月12日のAFCアジア・チャンピオンズリーグ、上海申花戦(等々力)での暴行事件を起こした男性が逮捕された」と発表があった。この男性は他クラブ・ファンを自称しているとされ、贔屓クラブと無関係の場所で暴れたということだ。

「フロンターレ主催試合なので、当クラブが処分を下した。逮捕者には贔屓クラブがあるということだが、暴力を振るったのは上海申花ファンに対して。『暴力の捌け口は何でも良いのか?』と考えると恐ろしい。警備をさらに強化するなど、対応策を練るしかない」(フロンターレ関係者)

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