
クマにアッパーカットはない
「第一撃は、『顔面パンチ』です。傷や骨折の状況からして、打ち下ろしや、下から突き上げるアッパーカットはない。水平方向に殴打しています。それから牙で噛む」
そのため、至近距離で出合ってしまったら、ただちに腹ばいに伏せて顔を地面につけ、両手で頭部や首筋を守れば致命的なダメージを防げる可能性が高いという。
「特に重要なのは目と首を守ることです。爪で目をぐちゃぐちゃにされてしまったり、視神経を切断されてしまったりすると、失明してしまう。首の頸動脈や頸静脈が傷つくと大出血する」
クマが食害目的で人を襲うケースはまれで、人間が危害を加えないとわかると、それ以上は攻撃せずに去っていくことが多いという。
「小グマ」も危険
ただし、好奇心旺盛な子グマは人間を恐れずに近づいてくることがあるという。
子グマであっても人間は勝てないのか。
「子グマは1歳半までは母グマと一緒に行動します。『子グマなら勝てるのでは』と思って戦うと、まず間違いなく、母グマが現れる。母グマの防衛本能はとても強い。激しい反撃を受けることになってしまう」
また、たとえ子グマ1頭であっても、爪や牙はとても鋭い。
「勝てるとは思わないほうがいいでしょう」
人身被害のピークはこれから
もしもクマの攻撃によって体の一部が取れてしまったら、病院に持ってきてほしいという。ポリ袋に入れたり、タオルで包んだりしてもいい。部位は洗浄したうえで、形成外科医や整形外科医がつなぐ。今の医療技術は進んでいることも知ってほしいという。
秋田県によると、今年は昨年の同時期に比べてすでに約3倍、クマの目撃情報が寄せられている。70人もの人身被害が発生した2023年度のように、大量出没の恐れがあるという。
クマによる人身被害のピークは、実は秋だ。冬眠を前にしてクマの活動が活発になるからだ。
「クマは人里に現れることも増えました。クマに襲われると、体が傷を受けるうえ、精神的にも深く傷つくことになる。できる限り被害を防げればと思います」
(AERA編集部・米倉昭仁)
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