春ねむりさん(撮影/小財美香子)
春ねむりさん(撮影/小財美香子)

 アルバムの1曲目に収められた「anointoment」は、壮大なメロディラインと力強いビートが響き合う楽曲。“春ねむりという概念的な身体に油を注ぎ、自らの手で火をつけることで、自らの権威性を焼き尽くす”というテーマは、アルバム全体のコンセプトにもつながっている。

「スピリチュアルな価値観を伝統的な霊的な儀式的手段を用いることによって解体して、その先にある人間の尊厳の神聖さについて考えたいというのが、この曲を書いたきっかけですね。“表層で付与される記号性やイメージを燃やす”という曲で、スピリチュアルとは真逆のことをやっているんですけど、曲を聴いた人にSNSで“春ねむりがスピった”と書かれたことがあって。ちゃんと聴いてほしいなって思います(笑)」

 鋭利なギターリフとダイナミックなビートが一つになった「supernova」は、“わたしの叫びはわたしのものだ”という思いが刻まれた楽曲。この曲を作ったきっかけは、2年ほど前から受講しはじめた大学の通信教育講座だったとか。

「私は大学を中退したのですが、学びが足りないと思って、改めて大学に入り直したんです。ひとりで本を読んでいると興味のあることしか入ってこないけど、大学にはいろんな科目があって。地学で教わった恒星の仕組みがすごく面白かったんですよ。スーパーノヴァ(超新星)を簡単に説明すると、恒星の内部で核融合が限界に達して、星が自身の重力で崩壊、爆破することで大量のエネルギーを放出することなんですけど、”それ、私のことだ!”と思って(笑)」

政治と音楽を分けないというスタンス

 分断、格差、排外主義といった言葉が飛び交う現在の社会へのカウンターとしても機能している本作『ekkolaptómenos』。彼女自身もSNSなどを通して、社会的、政治的な意見を発信し続けている。この国でしばしば聞かれる“ミュージシャンは政治的な発言をしないほうがいい”という言説に対してどう思うか? と聞くと、こんな答えが返ってきた。

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