
「ただ“楽しかった”で終わってほしくないんですよね。もし持っているとしたらその人自身の特権性に気づいてほしいし、ライブのなかで“自分が持っているものを人に分けてみようかな”という気持ちを持って帰ってほしい。日本でも海外でもそのことをしっかり言葉にしているし、“お願いします!”と強く伝えるようにしています。私はアナーキズムに興味があるんですけど、ライブ中に自由に動いて100%楽しむことと、隣の人をジャマしないことを両立させることはかなりアナーキズムだと思っていて。自分のライブではそういう空間を作りたいし、(オーディエンスにも)“自分たちはそれが出来るんだ”という実感を得てほしいと思ってます」

最新作『ekkolaptómenos』に込めた構造への抵抗
今年1月に独立し、自主レーベルを設立(その理由は「自分の制作スキルの成長に伴い、よりDIYかつアナーキーな活動というものを実践していきたいという気持ちが強くなったため」だとか)。ニューアルバム『ekkolaptómenos』(エコラプトメス)は、彼女の音楽性、メッセージ性がさらに明確に、力強く表現された作品だ。
「今は、あらゆるところで人間の存在が構造化されていると思っていて。国籍や人種もそうだし、ジェンダーもそうですが、いろいろなルールや法の規定があって、そこで固定されてしまっている。そこからこぼれ落ちるものが人間の本質だと思うし、どうすれば抗うことができるか?ということをずっと考えていたんです。今回のアルバムはそういう“構造”に焦点を当てて作りました。たとえば宗教だったり、法の命令的な側面だったり……こういう話って、興味がある人にしか聞いてもらえないじゃないですか(笑)。アルバムを聴いてもらって、“どんなことを歌ってるんだろう?”と思ってもらえたら大成功ですね。今回のアルバムはメロディもけっこうあるし、全体のボリュームも商業ポップスくらいの長さなんですよ。これだけ内容が濃ければ、このサイズでも伝わるんじゃないかなと思っています」