津田:いや、百田さんはできるはずですよ。歌って踊って、なおかつライブだったら曲ごとに立ち位置まで決められていて、それらを全部守りつつテンションを上げて客席を煽る、みたいな複雑なことを同時にやっているわけですから。
百田:津田さんがおっしゃったように、自分の間じゃないし、自分の表情でもなく、演じる人の表情に合わせた声をあてる。しかもそこに命を吹き込む、感情を込めるっていうのがすごく難しいなぁって。それで「ブラックパンサー」の続編(22年)を収録する前に、津田さんにたくさん質問しちゃったんです。
津田:そうでしたね。
百田:その時に津田さんが、「吹き替えでもお芝居であることに変わりはないし、映像に合わせて自分がいくだけだから」ってすごくシンプルに答えてくださって、「なるほど!」って腑に落ちました。私の中ですごく大事にしている言葉です。
津田:これは僕の考えですけど、たとえ口の動きにぴったり合わなくても、お芝居が死ぬほうが嫌だなと思っていて。きっと音楽も一緒ですよね。正確に歌おうとして置きにいくと、つまらない歌になりませんか?
百田:その通りだと思います。音程を外さないことばかり気にして歌っていた時期があったんですけど、ボイトレの先生から「音は合ってるけど、何も伝わってこない」ってよく言われました。
津田:上手くやろうとするよりも、魂が伝わるほうがいい。そこが無かったら、お芝居していても面白くないですから。
(構成/編集部・藤井直樹)
※AERA 2025年8月4日号
※この対談の続きは8月4日発売の「AERA 8月11-18日合併号」に掲載します。
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