泉:自分の中では、やるべきことはほぼやったと思ってて。条例を次々作ってきた。いったん作った条例は簡単には変わらないから、私が市長でなくなっても大丈夫。もっと大きいのは、役所文化も完全に変えたし、市民の意識も変わったから。そういう意味では、クサい言い方だけど、もう私が市長でなくなっても大丈夫な明石にしたという自負かな。

大宮:なるほど。明石市でできるんだったら、日本全国でできるっていうことですよね。それをサポートされていくと。

泉:自治体レベルは動きが速いです。トップが決断すれば、方針転換は瞬間にできるから。例えば東京の品川区も区長が代わった瞬間に、子ども施策に舵を切った。その意味では国の方がトロいです。

大宮:なるほど。

泉:私は「選挙は美しい」と思っていて、すごい可能性を感じてる。だって、全員が等しく1票を持っているんですよ。どんな金持ちも1票、貧乏人も1票、有名人も1票。私は選挙戦では常にサイレントマジョリティーの中に入っていくんです。私たちの社会をつくろう、私たちのまちをつくりかえようと。選挙がある以上は世の中を変えることは可能だと思ってます。

大宮:国民がうまく選べますかね。

泉:いま社会が壊れ始めてて、国民の中にも、国に「ええ加減にせえよ」というのが生まれてる。だから一瞬で変わると、私は思ってるんで。私は諦めてはいないです。

大宮:確かにその着火点に、明石市がなってるかもしれないですね。

大宮エリー(おおみや・えりー)/1975年、大阪府出身。99年、東京大学薬学部卒業。脚本家、演出家などを経て画家として活躍。クリエイティブのオンライン学校「エリー学園」「こどもエリー学園」を主宰。瀬戸内国際芸術祭(岡山県・犬島)で「光と内省のフラワーベンチ」を展示

泉房穂(いずみ・ふさほ)/1963年、兵庫県明石市出身。兵庫県立明石西高校卒。87年、東京大学教育学部卒。NHKディレクター、石井紘基氏の秘書などを経て、弁護士に。2003年、衆院議員初当選。社会福祉士の資格取得。11年から明石市長。23年4月末で政治家引退

AERA 2023年4月24日号