作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。ゲストは前回に引き続き明石市長の泉房穂さんです。

*  *  *

大宮:昨年、街頭インタビューで市民の方が「辞めないで」と泣かれていたのを見てじーんとしました。でも、4月末でお辞めになるんですね。

泉:4年前に暴言で辞職したときは、まだ道半ば感があったし、もし戻らなければ揺り戻しが起きる空気もあった。それに、多くの市民から署名もいただいて、心動いたわけですよ。

大宮:はい。

泉:でも妻は一貫して反対で。最後は家族会議で決めました。出馬表明の前日、晩飯の後に家族会議したんですよ。妻と娘と息子と私の4人で。

大宮:家族会議!すごくいいですね。

泉:そこで、投票して決めるって。

大宮:え? 家族で投票?

泉:おもむろに、私が「迷惑かけたけど、市民からも署名もいただいて、自分もまだやり残した気持ちがあるから、出たいです」って言うた。その瞬間にね、妻が、「私は反対です」って言うて。えーっ、みたいな。

大宮:(笑)。

泉:いきなり言うか?と思って。

大宮:奥さまからしたら心配や心労があったんでしょうね。

泉:そしたら、うちの息子、当時小5やってんけど、「出てほしい」と。こんな形でパパが終わるのは嫌やと。もう一回市長になって、ちゃんと見返してほしいと。

大宮:うわぁ、嬉しいですね。

泉:で、あとは娘。当時中学生やったんですけど、じーっと考えた結果、「私、白票」って。

大宮:なるほど。それもすごい。

泉:本音は嫌やけど、でもパパのために、寒いなか署名してる人たちを私、見てたからって。それで、賛成2、反対1、白票1。よって可決。

大宮:子どもも一人の人間として、リスペクトがあるじゃないですか。同じ1票があるっていうのが。

泉:子どもは親の持ちもんじゃなくて、子どもは子ども。これは自分の非常に強い思いですね。

大宮:でももう今回は……。

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