
1時間に80ミリ以上の大雨が約1.7倍に
盛り土は、大雨が降ると内部に大量の水がたまり、崩壊や流出を引き起こす恐れがある。万が一、線路が崩れれば、脱線の危険もある。
実際、90年9月の台風19号で三河安城~名古屋間の盛り土が崩れ、運休となった東海道新幹線は98本にもなった。梅原さんは言う。
「東海道新幹線は日本の大動脈で、23年度は1日平均44万人が利用し、上下合わせて平均370本もの列車が運行しています。そのため、ひとたび自然災害で運行休止となると、その影響は甚大です」
弱点を補うため、JR東海は、排水性や遮水性を高める対策を国鉄時代から進めてきた。だが、近年の異常気象により、従来の設計や対策ではカバーしきれないほどの豪雨が頻発するようになったという。気象庁によると、1時間に80ミリ以上の猛烈な雨の平均年間発生回数は、統計を取り始めた76年からの10年間は13.9回だったのに比べ、2015年からの10年間は23.9回と、約1.7倍に増えている。

今年6月に運転規制基準を変更
こうした状況を受け、JR東海は6月、東海道新幹線の運転規制の基準を変えた。
従来、東海道新幹線は次の3つの基準のどれか1つでも超えると運転を見合わせていた。
① 1時間の雨量が60ミリ以上
② 24時間の連続降雨量が150ミリ以上、かつ1時間の雨量が40ミリ以上
➂ 24時間の連続降雨量が300ミリ以上、かつ10分間の雨量が2ミリ以上
このうち②と③の代わりに、「土壌雨量」という指標を導入した。土壌雨量は、土壌中にどれだけ水がたまっているかを数値化した指標。沿線に設置した59カ所の雨量計の値を用いて算出する。
JR東海によれば、これまでの②と③の基準は、過去24時間の降雨の単純な累積であるため、24時間以上前に降った雨の影響を反映できなかったという。