盛り土の上に敷かれた線路を走行中の東海道新幹線「のぞみ」 ( photo JR東海提供)
盛り土の上に敷かれた線路を走行中の東海道新幹線「のぞみ」 ( photo JR東海提供)
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 東海道新幹線はよく雨のために運休する。帰省シーズンに重なれば、主要駅で大勢の家族連れらがホームで行き場をなくしている様子がニュースで流れるが、それも珍しい光景には感じない。それにしても、なぜこうも弱いのか。その理由を探ってみると、1964年の開業時にたどり着いた。

【写真】雨に弱い盛り土 JR東海の小牧研究施設につくられた「試験盛り土」はこちら

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 去る7月10日午後、首都圏を数年に1度しか発生しないような猛烈な雨が襲った。午後7時過ぎ、東海道新幹線は、品川~新横浜間の上下線で約1時間にわたり運転を見合わせた。品川駅では、多くの客が足止めされた。続く同17日にも、東海地方に降った雨の影響で東海道新幹線は上りが新大阪~名古屋間、下りが新富士~米原間で、一時運転を見合わせた。

 雨による東海道新幹線の運休は、いまや珍しくない。昨年8月16日には、列島を襲った台風7号により、東京~名古屋間で終日止まり、多くの帰省客が予定の変更を余儀なくされた。

1964年の東京五輪前に急ピッチで建設

 なぜこうも、東海道新幹線は「雨に弱い」のか。

「東海道新幹線には構造的な問題がある」

 こう指摘するのは、鉄道ジャーナリストの梅原淳(うめはら・じゅん)さんだ。

 東海道新幹線は1964年の東京オリンピックに間に合わせるため、59年に着工され、64年に開業した。建設期間が短かったことと、コンクリート構造物を大量につくる予算が足りなかったことから、

「従来通りの『盛り土』の上に線路をつくることになったのです」

 盛り土とは、土を盛って人工的につくった土台のことだ。東海道新幹線の全線515キロのうち、約半分の44%が盛り土区間となっている。

 それに対し、東海道新幹線より後に開業した新幹線は高架橋などコンクリート構造が中心だ。72年に開業した山陽新幹線は高架橋やトンネルが多く、盛り土区間は8%、82年に開業した上越新幹線はほぼ全線が高架やトンネル区間であるため、わずか1%に過ぎない。

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