愛知県小牧市にあるJR東海の小牧研究施設につくられた試験盛り土(写真/JR東海提供)
愛知県小牧市にあるJR東海の小牧研究施設につくられた試験盛り土(写真/JR東海提供)

24時間以上にわたり強く降り続く雨が増加

「しかし、近年、線状降水帯に代表されるような、24時間以上にわたり強く降り続く雨が増加しています。土壌雨量は、過去24時間といった一定時間に限定せず評価できる指標のため、24時間以上にわたり強く降り続く雨に対して、雨による線路設備の影響をより適切に評価できます」(JR東海)

 適切に評価することで、運休の本数を減らすことが可能にもなる。JR東海では、過去5年のデータで試算したところ、従来の基準よりも規制の回数や時間が減少したという。

 さらに、JR東海は、愛知県小牧市にある小牧研究施設でも、豪雨対策の研究を進めている。

 敷地内に高さ6メートル、長さ30メートルの実物大の盛り土を、建設時と同じ材料・同じ施工方法によって再現。散水装置によって、そこに1時間あたり200ミリの猛烈な雨を降らせる実験などを重ねている。こうした実験とデータの蓄積を重ね、より精度の高い運行判断につなげたい考えだ。

「盛り土の降雨に対する耐力や、のり面への降雨対策工などの性能を確認することが可能です」(同)

コンクリート構造への変更は「技術的には可能だが…」

 ただ、これらはいずれも対症療法に過ぎない。盛り土をなくしてコンクリート構造につくり替えることはできないのか。

 先の梅原さんは「技術的には可能だが非現実的」と話す。

「盛り土をコンクリート製の基礎に置き換えるには、年単位で新幹線を止めて工事をしなければいけません」

 東海道新幹線と並行して走るリニア中央新幹線が開業すれば、輸送に余裕が生まれ、東海道新幹線の長期運休を伴う大規模な改良工事が可能になるかもしれない。ただし、開業は早くても2034年以降と見込まれている。

「(東海道新幹線は)盛り土を補強したりしながら、何とか使っていくしかないでしょう」(梅原さん)

 これから本格的な台風シーズンを迎える。東海道新幹線の「雨との闘い」はこれからが正念場だ。

(AERA編集部・野村昌二)

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