
現在放送中のNHKの連続テレビ小説「あんぱん」(毎週月~土曜午前8時 NHK総合ほかにて放送中)は後半戦に突入し、新たなキャスト、薪鉄子役として戸田恵子が登場したことで「アンパンマン」色がより強くなった。これまでもヒロイン・のぶ(今田美桜)がやなせたかしをモデルにした柳井嵩(北村匠海)に出会った子ども時代の着物がドキンちゃんカラーだったりはしたが……。それでも、作家で芸能評論家の宝泉薫さんは「あんぱん」は「アンパンマン」的世界に依存しながらも、朝ドラにうまく仕上がっていると分析する。
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NHKの朝ドラ「あんぱん」に戸田恵子が出演している。主人公ののぶに影響を与える同郷の代議士という役だ。
ちなみに、戸田はアニメ「それいけ!アンパンマン」シリーズにおいて、主人公・アンパンマンの声優を長年務めてきた。漫画家・やなせたかしとその妻の人生、そして、やなせの代表作「アンパンマン」の物語をモチーフとしているこの朝ドラにとって、待望のゲスト出演であり、勝負手のひとつといえる。
実際、こんなネットニュースも見かけた。
「『あんぱん』ついにアンパンマン“本人”登場 “粋なキャスティング”戸田恵子は希望の光に?」(リアルサウンド)

これまでにも、山寺宏一や中尾隆聖といった「アンパンマン声優」が出演して、盛り上げてきたことなどから、戸田の活躍に期待する内容だ。
前作「おむすび」でもこれができたら
ただ、そういうことができる「あんぱん」を楽しみつつも、筆者は別の気持ちも抱いてしまう。前作「おむすび」でもこれができていたらなぁ、というものだ。
「あんぱん」と「おむすび」というふたつの朝ドラには似た者同士的なところがある。ヒロイン役の女優が福岡出身であること、食がテーマであること、タイトルがひらがな四文字であること、ヒロインがほぼ不在となる期間が存在したことなどが共通点として挙げられる。
しかし、決定的な違いはモチーフの方向性と扱い方だ。「あんぱん」のモチーフが「アンパンマン的正義」だとすれば「おむすび」のそれは「ギャル的マインド」。劇中では、
「他人の目を気にするな。自分のやりたいことを貫け」という「ギャルの掟」が掲げられ、ギャルファッションやギャル語があふれるなか、ヒロインが成長していく姿が描かれた。また、そのBGMとして、安室奈美恵や浜崎あゆみのような、かつてのギャルに愛された音楽が流れ、ヒロインたちがカラオケで歌ったりもした。