「『虎の爪』の前に、両腕を羽ばたかせる『翼ポーズ』もやっていた。意味を持たせることで、『魂が入ったもので、勝利に向けてチームを一丸にするもの』という位置付けもあります」(阪神関係者)

 今季のドジャースは同ポーズ後、顔の前で2本の指でつまむような仕草も加わった。大谷が出演するCMがベースとなった『デコルテ・ポーズ』と呼ばれるもの。「ドジャースが気を遣って、差別化してくれたのでしょうか?」(阪神関係者)という冗談が出るのも、チーム状況の良さを表しているようだ。

 チーム全体でのポーズ(=パフォーマンス)は、ファンを含めたチーム内外の結束力を高め、勢いを加速させる効果がある。しかし導入に関しては、阪神内でも慎重論があったとされる。

「2013年の『グラティ』には、球団内外から賛否両論が湧き起こった。『伝統球団としてあるまじき、相手に対する敬意を欠いた行為』と断罪されたこともあった。当時のトラウマ的なことが残っていたのも事実」(阪神関係者)

『グラティ』は同年に加入した西岡剛が発案。本塁打を打った選手がベンチに戻った際、一同が揃ってスコアボードを指差すものだ。「相手チームに失礼」「挑発・侮辱行為に当たる」と多くの批判が寄せられ、球団OBからも苦言が出たほどだった。

「当時はMLBでも、『極端な喜び方は相手に対する敬意を欠いた行為』と言われていた。それが今では本塁打を打った後に被り物をするなど、時代は変わっている。MLBがそういう状況なので、NPBでも何の問題もないと思う」(在米スポーツライター)

 少し前までは、いわゆる“アンリトンルール”があった。「過度のパフォーマンスは、報復行為をされても仕方ない」という時代だ。しかしスポーツ全体のエンタメ化も進み、古い慣例に縛られなくなった部分は大きい。

「DeNAは本塁打を打った選手が胸の前で拳を握る『デスターシャ』をやっている。山川穂高ソフトバンク)の『どすこい』や松田宣浩(元ソフトバンク他)の『熱男』もあった。MLB同様に常識の範囲内で、どんどん盛り上げてもらいたい」(在京球団演出担当)

 ベンチ内で被り物やマントを着用したり、ひまわりの種をぶちまけるところまで行くと疑問も残る。しかし日本らしい形でパフォーマンスが広がるのは、見ている側からしても大歓迎。球団スタッフに“振付師”まで登場するようになったら面白いのだが……。

(文・田中雄也)

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