日本でも現役選手のままこの世を去った男がいる。松田直樹(1977-2011)だ。優れた身体能力と溢れる闘志で相手FWを封殺したCB。アンダー世代から日本代表のユニフォームに袖を通し、1996年のアトランタ五輪での「マイアミの奇跡」の立役者の一人となり、2002年の日韓W杯にもレギュラーとして出場した日本歴代屈指のディフェンダーだった。Jリーグでは高校卒業後の1995年から2010年まで、マリノス一筋に活躍を続け、絶大な存在感を発揮して周囲からも慕われる存在だった。しかし、当時JFLだった松本山雅FCに移籍してプレーを続けていたシーズン途中、2011年8月2日のチーム練習中に突然倒れ、そのまま意識を取り戻すことなく2日後に34歳で急逝。死因は急性心筋梗塞。グラウンドにAEDが設置されていなかったことが問題視され、各地・各所へのAED普及加速の大きなきっかけとなった。

 多くのファンを熱狂させ、子どもたちに夢を与える役目を担うプロのサッカー選手たち。その道半ばで倒れた彼らの死は“非業”であったかも知れないが、後世に影響を与えてきたことは間違いない。ジョタの死は悲しい。親しい者ほど、乗り越えるには時間を要する。だが、必ず、何か特別なものを残してくれているはずだ。

(文・三和直樹)

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