
ダルトン・インベストメンツで、フジ・メディア・ホールディングスの案件を指揮していたのは、同社のマネージングディレクター兼パートナー(出資者)の西田真澄だ。
西田が資本市場について開眼をしたのは、2014年から2021年までシティグループのニューヨーク本社で、不良債権売買を担当したからだ。
西田が扱った案件のひとつに、東芝が経営危機におちいることになった原因の会社ウエスティングハウスがあった。原子炉の建設、保守点検を行う会社だ。
経営破綻をし、株式が100パーセント減資したウエスティングハウスの債権元本9000億円分を3000億円で買った。株式が100パーセント減資した会社は債権をもつものがオーナーとなるわけだから、実質この会社を買ったわけだ。
デューデリジェンスを行う過程で、東芝とウエスティングハウスが結んでいた契約を確認する機会があり、愕然とする。
「最低な契約でした。売上はフィックス、コストは無限大にOKというような契約で、なんで、こんな損をする契約をわざわざ東芝は結んだのか」
バリュー投資の父の教えをもとに
福島原発の事故以降、原発の保守点検でむしろこの会社の需要はある、そう思って元本の3分の1の値段で西田は買ったのだが、すぐにブルックフィールドというカナダの資産運用会社が、さらに割り増しの金でこの債権を買うことになり、利益を確定させる。
この取引は、トレードマークトレードと言われるほどの大きな利益をシティにもたらした。
これが、2018年の話だが、このころから、西田は日本企業のコーポレートガバナンスに興味を持ち、コロンビア大学のビジネススクールで学ぶようになる。ここで、日本企業のコーポレートガバナンスについて非常勤で教えていたのが、国際投資企業コンサルタントのアリシア・オガワだった。オガワは、複数のアクティビストファンドのアドバイザーも務めているが、西田はオガワがフィナンシャル・タイムズに寄稿した日本のコーポレートガバナンスについての論考に感銘をうけていたのだった。