
「気象状況などで刈り入れのタイミングがずれると、コンバインがうまくまわらない。事業コストが上昇してしまい、経済合理性を勘案して、事業を終了しました」(担当者)
国内農機メーカー最大手のクボタは「農機シャアリングサービス」を展開するが、扱いはトラクターのみで、田植え機やコンバインについては事業化していない。理由は、先のJA三井リースのコメントとほぼ同じだった。
農機は目いっぱい稼働させる
「農業機械は目いっぱい稼働させる。そうしないと、利益が出ない」(竜也さん)
しかし、機械の故障にも悩まされる。水田で取材中、突然、竜也さんが運転する草取機のアームが上がらなくなり、作業を中断した。駆けつけた農機メーカーの技術者が調べると、エンジンの動力を伝えるベルトと部品が傷んでいた。
「つい先日も、ほかの部分を修理したばかりなのに……。他の機械もシーズン中に何回も壊れる。可能なかぎり自分たちで修理していますが、それでも諸々の修理代が年間、100万円単位でかかる」(同)
「ドローンで省力化」どころかむしろ忙しく
政府は今年4月、中長期的な農政の指針となる「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定した。米農家の高齢化や担い手不足を補うため、AIやロボット技術を活用した「スマート農業」を推進する。自動運転の田植え機やコンバイン、ドローンなどの活用を挙げる。
しかし、竜也さんは「力を入れるべき点は、そこじゃないんだよね」と、不満を口にする。
「知り合いの農家がドローンを使い始めたけど、他の農家から肥料散布などの仕事を請け負わないと、購入費用をペイできない。省力化どころか、かえって忙しくなった。しかも、自分のところの散布は後回しになったと聞いています」(こずえさん)
記者が千葉県の米農家に見せてもらったドローンは約300万円。「これでも一番安い機種」だと言う。
フエキ農園は、ようやく昨年度、黒字に転じた。
「国が推奨する高性能の農業機械を導入しても、元が取れるのはいったい、いつなんでしょう。時々、農機メーカーのために米を作っているような気がします」
そう竜也さんは呟いた。
(AERA編集部・米倉昭仁)
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