
猛暑で歩留まり「こんなに減るんだ」
日本有数の米どころ、新潟県南魚沼市の米農家・笛木竜也さんによると、猛暑の23年に収穫した米は、等級だけでなく、「精米歩留まり」も悪かった。
「通常、精米歩留まりは9割ほどで、玄米30キロを精米すると白米約27キロができる計算です。ところが、23年産米は約25キロ。『こんなに減るんだ』と驚くほどに減りました」(笛木さん)
米とは、稲の種子だ。前出の伊藤さんによると、猛暑にさらされた稲は種子を守るため、もみ殻やぬか層を厚くする。厚くなったそれを取り去れば、可食部になる白米は自然、小さくなる。つまり、猛暑により米の実質的な収量は否応なく減少するということだ。
「農水省は米の生産現場で今、何が起こっているかを見ようとせずに、机上の計算だけで生産量を決めてきた。23年は事実上、『不作』だったのだから、24年は増産しなければならなかった。ところが、われわれに対して示された作付面積の目安は変わらなかった」(伊藤さん)
白米の流通量をなぜ精査しないのか
小泉農水相は収量調査について見直しを発表したものの、最近の猛暑の影響で精米歩留まりが下がり、白米の流通量が減少していることについては具体的には触れなかった。
「猛暑の影響についても国が検証を行わない限り、米の流通量が減少している本当の原因はわからない」(同)
だが、検証を行えば、これまで「流通に問題がある」としてきた農水省の主張が覆える可能性がある。
先日は突然自身のSNSにLINEクーポンを提示するなど、米について振れ幅の大きい挙動を繰り返す小泉農水相だが、何をどこまで理解しているのか、背後に何を意図するブレーンがいるかはわからない。
だが、白米の流通量に影響する「歩留まり」について精査する気配は今のところない。検証が実現する可能性は残念ながら低そうだ。
(AERA編集部・米倉昭仁)
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