「お お おはよう」(竈門禰豆子/15巻・第126話「彼は誰時・朝ぼらけ」)
太陽を克服した時に、禰豆子が最初に発した言葉である。鬼という生き物が「太陽」を徹底的に忌避しなくてはならない性質を持つ一方で、人間としての「生」は常に太陽とともにある。命が生まれる春のおとずれも、人間としての生の復活も、「太陽」がそれを象徴している。
みずからが鬼化を望んだ者たちは、「まだ死にたくない」、「このままでは生を終わらせられない」というある種の執着を持った人間だった。しかし、愛する者との思い出、他人を傷つけたくないという優しい気持ちが、鬼化による激情から「人間の心」を守る。禰豆子には、彼女の「人としての幸せな生」を強く願う兄・炭治郎がおり、無惨には彼を愛してくれる人がいなかった。あれほどまでに「生きたい」と言った、鬼舞辻無惨の真の願いは、本当に丈夫な体だったのか。死なないことだったのか。
今後、鬼滅の物語が進む中で、鬼舞辻無惨の1000年の孤独と、彼が心から望んだものが何だったのか、少しずつ明らかになる。
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