壁がないため、外気が入り込み空調が利かないベルーナドーム
壁がないため、外気が入り込み空調が利かないベルーナドーム

「他球団の選手がうらやましい」

 西武のOBは「ホームでプレーすることがアドバンテージになっていない」と苦々しい表情で話す。

「スタミナ抜群の今井が熱中症で降板するなんて、よっぽどのことですよ。自分も現役時代にプレーしましたが、夏場にベルーナで6連戦すると体力の消耗がひどかったです。30分以上守り続けると、ぼおっとしてくる。数日たっても頭痛がおさまらず、倦怠感が抜けないことが何度もありました。マウンドで投げ続ける投手は野手より熱中症のリスクが高いことは間違いない。冷房の利いたドーム球場でプレーする他球団の選手が正直うらやましいなと感じました」

 西武の現役選手も、「ベルーナで怖いのは夏場の暑さですね。寒さは着込めば大丈夫ですけど、暑さには慣れない。睡眠や食生活に当然気を使っていますし、試合中に塩分、水分をこまめに摂取しても体がキツイ。対策には限界があります。年々暑くなっていますし、不安になることがあります」と漏らす。

 一方、他球団の選手からは同情の声も出る。

「プレーしていて最も過酷な球場は間違いなくベルーナです。他の球場はナイターになると暑さが多少やわらぐのですが、ベルーナは湿度が高いままでサウナ状態に近い。僕らはビジターなので年に11、12試合プレーすればいいですが、西武の選手たちはシーズンの半分で試合する。大変だと思いますよ」

 優勝争いを繰り広げる日本ハムはエスコンフィールド、オリックスは京セラドーム、ソフトバンクはみずほPayPayドームと、それぞれ冷房の利いた本拠地でプレーできる。西武と比較すると環境面でこのアドバンテージは大きい。ペナントレースが佳境に入る夏場は体力勝負になるが、ベルーナで戦い続けることで、西武の選手たちは体力が奪われかねない。

 ベルーナの空調が利かないことは以前から問題視されてきたが、温暖化が進み、年々気温も上昇しているため深刻度が増している。気象庁は今年も猛暑が長く続くという予報を発表した。西武が環境を変えるためには、球場を改修するか、本拠地を移転するしかない。

次のページ 選手たちにストレスない環境を