マウンドでしゃがみこんだ西武・今井(6月27日、ベルーナドーム)=日刊スポーツ
マウンドでしゃがみこんだ西武・今井(6月27日、ベルーナドーム)=日刊スポーツ
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 今年のパ・リーグで、「台風の目」になっているのが昨年最下位に沈んだ西武だ。今井達也、隅田知一郎の左右の両エースを筆頭に強力な投手陣で守り勝つ野球が徹底している。1点差ゲームは6月末まで17勝9敗と大きく勝ち越し。野手陣も西川愛也、滝澤夏央、長谷川信哉、ドラフト2位の渡部聖弥と若手たちが頭角を現し、白星を重ねることで自信をつけているように感じる。ただ、心配な材料がある。本拠地・ベルーナドームの“暑さ”だ。

【写真】ドーム球場なのに柱の間から外気が入り込むベルーナドーム

 絶対的エースの今井が緊急降板したアクシデントは記憶に新しい。6月27日、ベルーナでの日本ハム戦に先発した今井は、3回まで相手打線を1安打無失点に抑えていた。だが、4回、先頭の田宮裕涼に本塁打を浴び、安打と四球で2死一、二塁のピンチを作る。続く万波中正に3球目を投げ終えると、マウンドでしゃがみ込み、表情をゆがませて立ち上がれなくなった。そのまま今季自己最短の3回2/3で降板。病院で検査を受け、熱中症と診断された。

「当日は気温33度でしたが、気温以上に厄介だったのが湿気でした。ベルーナの大きな問題は空調が利かないことです。窪地のような場所にすり鉢状の球場があるため、空気がグラウンド内にこもったまま外に抜けない。この日も試合前に立っているだけで汗が止まらず、くらくらしました。マウンド上で投げる投手の消耗度合いは想像を絶します。今井にダメージが残らなければいいですが……」(西武を取材するスポーツ紙記者)

 他球団のトレーナーは「熱中症になった場合、元のコンディションを取り戻すまでは2週間以上かかりますし、『またなるんじゃないか』という不安感に襲われるケースが多い。『暑さに強くなれ』とハッパをかければいい問題ではありません」と指摘する。熱中症になると命を落とす危険もある。体力のあるアスリートも例外ではない。

 ベルーナは既存の野球場にそのまま屋根を架けた珍しい構造のドーム球場だが、壁がないため空調は利かない。雨は防げても、春先は寒く、夏場は熱気や湿気がグラウンドにこもって、現場でプレーする選手たちの評判はかんばしくない。

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