阪神・森下翔太(日刊スポーツ)
阪神・森下翔太(日刊スポーツ)

左翼に回って打撃に陰りが見える森下

 首位を快走している阪神だが、気になるデータがある。春先から打撃好調だった森下だが、左翼に回って以降の23試合では打率.209、4本塁打と打撃に陰りが見えていることだ。現役時代に外野の3ポジションを守った球界OBは「交流戦でパ・リーグの好投手と対戦していたことを考慮しなければいけない」と前置きした上で、守るポジションが変わることで打撃に与える影響を懸念する。

「個人的に左翼は外野の中で一番難しいポジションだと思います。左打者のライン際に切れていく打球は処理が難しいですし、右打者が引っ張って背後に飛ぶ打球も数を重ねないと落下地点までうまく入れない。春季キャンプ中に練習していたならともかく、守り慣れていないなら神経をすり減らします。右翼と左翼では見える風景が全然違いますし、試合でリズムをつかむまでに時間がかかる。守備に負担が掛かれば、打撃に当然影響するでしょう」

 森下は6月12日の西武戦(ベルーナ)で失策を犯している。4回1死二塁で平沼翔太の打球は左前に落ちたが、バウンドする打球にグラブを伸ばすも届かず後逸。二塁走者の源田壮亮が一気に本塁へ生還した。球界OBが解説する。

「あの打球はバウンドした後に不規則な回転でイレギュラーしています。ベルーナは普段守っていない球場ですし、前にチャージを掛けているので難しいですよ。ただあの試合に限らず、森下の左翼での打球の追い方を見ると守り慣れていないとは感じます。右翼に森下、三塁に佐藤を戻したほうが守備力の観点からもいいと思いますけどね。谷は内野だけでなく左翼をソツなくこなしますし、前川は22歳でまだまだ若いですから実戦経験を積めば外野守備はうまくなります。肩は弱いかもしれないけど、近本みたいに送球までの動作を早くしてカットの内野手まで正確に投げれば十分です。ベンチに置くのはもったいないなと感じますね」

「前川がスタメンから外れて助かる」

 他球団はどう見るか。セ・リーグ球団のスコアラーは「クリーンアップの後を打つ6番の前川が厄介だったので、スタメンから外してくれたのは助かりますね。今年は5月以降に調子を落としていましたが、3、4月は好調で打線の核になっていた。天才的な打撃センスを感じますし、走者を置いて回したくない打者です」と明かす。

 また、別のセ・リーグ球団の編成担当は「個人的な印象ですけど」と前置きして、こう語る。

「佐藤が三塁を守るほうが嫌でしたね。守備力が昨年に比べて格段に安定していましたし、守備のリズムが打撃につながる好循環が生まれていた。一塁・大山、三塁・佐藤でどっしりしていたほうが重厚感を感じました。三塁を守る選手が日替わりだと迫力を感じません」

 阪神が投打共に充実した戦力であることは間違いない。だが、勝負の世界はデリケートだ。佐藤を右翼、森下を左翼で固定する布陣が吉と出るかどうか。リーグ戦が再開し、夏場以降の戦いで、真価が問われる。

(今川秀悟)

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