
交流戦を終えて借金5。首位・阪神に6.5ゲーム差の5位につけている中日で、期待以上の活躍を見せているのが34歳左腕の松葉貴大だ。
昨年までの松葉は相手打線が2巡目になる5、6回で交代するケースが多かった。大崩れせずに試合を作る能力が高いものの、先発ローテーションの中心という位置づけではなかった。だが、プロ13年目の今季はエース格に。13試合登板中、9試合で7イニング以上投げて7勝4敗、防御率1.54。最多勝や最優秀防御率といった投手タイトルを狙える位置につけている。対戦するセ・リーグの打者はある変化を口にしている。
他球団が獲得しやすい理由
「多彩な変化球をコーナーに散らすイメージがあったのですが、今年は初球からテンポよくストライクゾーンに投げ込んでくる。厄介なのは130キロ台の直球と変化球の球速差が少ないので見分けがつきにくいことです。直球だと思って振りにいったら、手元で変化するカットボールやツーシームでバットの芯を外される。チェンジアップ、スピリットもストライクからボールゾーンに変化するので見極めが難しい。2年連続で二けた勝利をしたことがある山崎福也(日本ハム)に投球スタイルが似ています。的が絞りづらく、強引に引っ張ると内野ゴロで術中にはまってしまう」
絶対的エースの高橋宏斗が13試合登板で2勝7敗、防御率3.31と本来のパフォーマンスを出し切れていない状況で、松葉がいないと想像するとゾッとする。現在、先発陣に不可欠な存在になっているが、気になるのは今オフの去就だ。今年限りで3年契約が切れる左腕は海外FA権を取得。推定年俸5000万円で金銭、人的補償がないCランクのため、他球団が獲得しやすい。
「山崎、石川柊太(ロッテ)がFA権を行使した際は、Cランクだったことも追い風となり複数球団の争奪戦になりました。先発左腕のコマ不足に悩むチームは多いですし、松葉が権利を行使すれば、FA市場の目玉になることは間違いないでしょう」(スポーツ紙デスク)
19年のシーズン途中にトレードで中日に移籍したが、そもそもはオリックスに2012年にドラフト1位で指名されてプロ入り。パ・リーグ球団に移籍しても適応するのに時間がかからないだろう。今年、キャリアハイの成績を残せば評価がさらに上昇するのは間違いない。
FAの去就でもう一人、中日には気になる投手がいる。プロ9年目の柳裕也だ。21年に最優秀防御率、最多奪三振を獲得するなど先発の軸として活躍。今年は開幕から4試合に登板し、防御率0.72と安定した投球を続けていたが、右肩のコンディション不良で4月下旬に戦線離脱した。チームにとって大きな痛手となったが、現在はファームで実戦登板を重ねており1軍復帰が間近。その柳も今季中にFA権を取得予定だ。