
人手不足に加え、「甘え」がある
――「名ばかり点呼」となっていたと言わざるを得ません。いつからこのようなことが起きていたのでしょうか。
アルコール検査を伴う点呼が行われるようになったのは、郵政民営化が行われた2007年以降です。民営化によって、郵便局の運送部門も一般貨物自動車運送事業になり、点呼の実施が義務付けられました。ただ、制度としては整備されたものの、現場では時代に「形だけの点呼」が定着していったように感じます。
――なぜでしょう。
一番の理由は人手不足です。点呼にかかる時間は、1人あたり数分ですが、点呼を行う班長も他の局員とほぼ同じ業務を抱えています。朝の一番忙しい時間に対応が追いつかないのです。
あと一つは「甘え」だったと思います。私たちの感覚では、「飲酒運転」とは、“酒を飲んでからの運転”で、それは当然いけないという認識でした。けれど、「前日の酒が残っている状態なら、少しぐらいなら大丈夫」と考え、その危険性や法令違反であるという認識が甘かったと思います。
ただ、民営化前から「結果が合っていれば良い」という風潮はありました。
配達してなくても「配達完了」と虚偽報告
――他にも、不正はあったということでしょうか。
その日の配達実績は、各局が郵便支社に報告しますが、配達しきれなく残った郵便物があったとしても、「すべて配達完了」と虚偽報告するなど、不都合な事実を隠蔽する例は珍しくありませんでした。
――組織としてのガバナンスが機能していたとは思えません。
親会社の日本郵政の増田寛也社長はかつて、「悪いニュースほどすぐに知らせてほしい」と熱っぽく語りかけていましたが、現場から言えばそれは建前です。悪いニュースは絶対上に報告しません。報告したところで適切な対応はされず、反対に不利益な扱いをされると知っているからです。
その一方、問われるのは自己責任です。「あなたがやったんだから、あなたの責任」と言われ、始末書を書かされ、処分されます。