
今年1月、兵庫県の郵便局で発覚した運転手の点呼未実施問題。その後、日本郵政の社内調査で同様の問題は全国で起きていることがわかり、国土交通省は自動車貨物運送の事業許可を取り消す方針を示している。郵便局で何が起きているのか。現役局員がAERAの取材に応じた。
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――郵便局で運転手に対し法令で定める飲酒の有無などを確認する「点呼」で、全国3188局の75%にあたる2391局で不適切な点呼が確認されました。
私が勤務するのは都内の大型郵便局です。配達員は約120人いて、20班に編成されています。1班は6~10人で構成されています。
乗務前のアルコール検査を含む「点呼」は、私の局では行われていました。しかし、実際は形式的なものにすぎませんでした。
――どういうことでしょう。
出勤は朝8時です。そしてまず「郵便体操」という郵便局独自の体操を10分ほど行います。その後で、各班の班長が、一人一人にアルコール検査器に息を吹きかけさせ、数値が「0.00mg/L」であることを確認した上で、点呼簿に「異常なし」を意味するハンコを押して鍵を渡します。
しかし実際には、機械の不具合で反応しなかったり、前日飲みすぎて「0.00mg/L」でなかったりした場合も、そのままハンコを押して、鍵を渡していました。
酒気が残っていても「水でも飲んで」で乗車
――つまり、酒気が残った状態でも乗務させていたのですか。
はい。配達開始は午前10時頃なので、前日の酒であれば、あと2時間もあればアルコールは抜けるだろうと考え、「水でも飲んでおいて」といってそのまま乗車させていました。
――事実上の「データ改ざん」では?
おっしゃる通りです。さすがに、酩酊状態でフラついているような人は乗せず、内務作業をさせていました。ただ、少しお酒が残っている場合は、午前中だけ自転車で配達させることもありました。自転車も飲酒運転の対象だという認識がありませんでした。
――そうした状態で運転し、事故に繋がったことはあったのでしょうか。
私の知る限り事故は発生していません。ただ、「点呼」の趣旨を拡大解釈する動きも見られました。
――拡大解釈とは?
点呼は本来、各班の班長と副班長が行うことになっていますが、権限のない局員が実施することがありました。実際、私は班長でも副班長でもないので点呼の権限がありません。それにもかかわらず、アルコール検査を実施し、ハンコを押して鍵を渡していたことが何度もあります。