「まちの保健室」への思い

 私が伺ったのは、にじカフェが場所を提供して月に1度開催されている「まちの保健室」の日でした。担当しているのは、看護師のくみさんです。その日はカフェの一部が「まちの保健室」になります。

 具体的にどんなことをされているのかと聞いてみると、「どこに相談すれば良いのか分からない困りごとを聴いている」とのことでした。一般的に、行政に相談に行く頃には困りごとが深刻になっているケースも多く、そうなる前に誰でもアクセスできる場所で気軽に立ち寄って相談できるつながりの場を作りたかったそうです。

 くみさんは「社会から自助を求められる。子育てでも介護でも、病気でさえも、周りを頼らずに自分たちで頑張れという雰囲気が強いと感じます。そもそもそんなことは無理なので、近所に頼れる誰かがいるといいと思っています」とおっしゃっていました。

深刻な状況にならないうちに

 にじカフェに訪れた相談者と一緒にお茶を飲みながら、「友人には相談しにくいけれど誰かに聞いてもらいたい話」などを傾聴し、必要であれば支援につなぐことにより、病院でいう「スクリーニング機能」になるようです。困りごとがありながらも【まだ平気】【自分はそのレベルではない】と思っている方が多く、深刻な状況にならないうちに話を聞くことは、孤立を防ぐためにも重要とのことでした。

 またこの日は隣のスペースで、流産や死産を経験したママたちの集いも行われていました。にじカフェは仕切りをなくして大きなスペースにすることも、パーティションで区切ることもできるようになっているため、こうしたセンシティブな内容も気兼ねせずに話すことができます。赤ちゃんや子どもを亡くすことは想像をはるかに超える苦しみです。同じ境遇のパパやママたちが実際に会うことにより「赤ちゃんの話ができる場所」となり、安心感につながるのだそうです。「ひとりではない」と思えることで、ほんの少し前を向き始めるきっかけになるのかもしれません。

次のページ 地域で生きていくために重要なこと