コミュニティーカフェ「にじカフェ」で。地域のつながりの大切さを実感していたので、実際に見学に行けて良かったです(写真/江利川ちひろさん提供)
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「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

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 私の仕事の拠点となっている神奈川県の湘南地域には、地域の相談支援に関わる人たちが職種を超えて交流する会があります。会の名前は「つながる湘南」。ゆったりしたスペースがある放課後等デイサービスで開催され、軽食をいただきながら交流します。この施設を運営しているNPO法人が主催していて、私は法人の副理事長とつながりがあり、今年度から参加させていただくようになりました。

 この会では、交流を深めるためになるべく初対面同士で話すことを勧められ、ランダムに座った数人でテーマを決めてディスカッションをする時間があります。先月の会では、毎回軽食を用意してくださっている「にじカフェ」のぜにさんと同じテーブルになりました。ぜにさんは看護師なのですが、地域でコミュニティーカフェやつながる場を提供していて、その中には「まちの保健室」があるとのこと。「まちの保健室!?」ととても興味を持ちお話を聞くと、どんどんその理念に共感し、後日カフェにお伺いさせていただくことになりました。今回は、地域のつながりについて書いてみようと思います。

おいしいコーヒーが飲みたいけれど

 ぜにさんがコミュニティーカフェをオープンしたきっかけは、数年前に病棟で担当した余命数カ月の患者さんに「おいしいコーヒーが飲みたいけれど、あきらめて缶コーヒーを飲んでいる」と聞いたことだったそうです。他にも「外出したいと思っても、車いすで移動すると家族に迷惑をかけてしまう」「少し段差があるだけで自由にお店に入ることができない」という声をたびたび聞くことがあり、想いに賛同してくれた介護福祉士のもえさんと一緒に「人生を最後まで楽しく生きる!」をコンセプトに、2022年に「にじカフェ」をオープンしました。

 古民家を改装したため、にじカフェの玄関には段差があります。専用のスロープもあるようですが、スタッフや居合わせた人たちで持ち上げることの方が多いそうです。ここでは「介護される側」と「介護する側」の壁をつくらないこともコンセプトのひとつであり、みんなの居場所をみんなでつくるという雰囲気が伝わってきました。

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