
渋谷区道玄坂2丁目。渋谷駅から道玄坂を上がって、「しぶや百軒店商店街」に入るとその店はある。1952年創業で、東京のラーメンファンなら知らない人はいない名店中の名店である。今回はそんな「喜楽」の歴史を紐解いていこう。
初代店主・林章圭さんは台湾出身で、仲間たちと大森で「喜楽大飯店」を営業していた。ここで修業した職人が独立していくなかで、章圭さんは渋谷で「喜楽」を開業した。
台湾の知人から安く譲り受けた土地で、店の周りには飲み屋が今以上に広がっていた。1960年代は「喜楽」も夜中まで営業していて、飲み屋として使う常連客も多かった。
後に二代目となる息子の茂夫さんも幼い頃から店を手伝い、近所の出前にもよく着いていった。高校時代には厨房に入るようになり、父の味を学んだという。

台湾「赤タマネギ」のインパクト
「喜楽」といえば何といっても醤油ラーメンに揚げネギが入っているのが特徴だ。この揚げネギは、台湾の赤タマネギを揚げたもので、現地でよく使われている。日本のネギやタマネギとも風合いが違い、台湾のものでないとこの味が出ない。だが、なかなか日本では手に入らないそうで、「喜楽」は台湾現地の親戚に買い付けてもらっている。茂夫さんは言う。
「うちのラーメンはこの揚げネギでコクを出しているほか、醤油ダレも醤油をそのまま使うのではありません。独自の配合をしていて、味に特徴があります。一般に言われているあっさりとした味わいの『東京ラーメン』とは違い、当時からインパクトのある味だったと思います。他店が20円ぐらいでラーメンを出していた時代に、50円で出していました。ただ、その後値段を上げそびれて、今では安くなってしまいましたけどね(笑)」