子どもに向き合う時間が十分に取れず、悩むワーママは多い

働くのは「今じゃない」

 経済的に自立しておきたい思いがあり、ずっと働いてきたが、「今じゃない、と思って。家族との時間を優先して、またタイミングが来たら仕事をしたい」と、晴れやかな表情で話す。業務委託やリモートワークなど働き方が多様な時代になったからこそ、いつでも戻れる安心感があるという。

 神奈川県の海沿いの街で暮らす専業主婦の女性(30)も、自分の選択に納得しているひとりだ。

 東京都の郊外で生まれ育ち、大学卒業後は大手広告会社に入社。仕事はとても楽しかったが、オフィスの中で長時間働き続ける生活スタイルに耐えられず、体調を崩した。「空が狭くて、苦しくて。自分には合わない」と2年ほどで退職を決断。その後結婚し、少し余白のある生活をしたいと夫と相談して、今の家への引っ越しを決めた。

 今は、天気が良い日に3歳と1歳になる2人の子どもを連れて海までお散歩をしているとき、「幸せだな」と感じるという。

専業主婦として生きる

 まだ若いこともあって、同級生の多くはまだ独身でバリバリ働いている。「みんなキラキラしているなと思います。私にはないものだし、本当にすごいことです」と言ってから、こう続けた。

「でも、自分なんて、とは思いません。いま子育てが忙しい時期ということもありますが、自分にとって理想の生活ができていると思うから。それに、ずっと働かないと決めているわけではなくて『今は家にいるけど』くらい。家族の様子を見ながら、その時々で決めたらいいかな、って」

 話を聞かせてくれた2人に共通していたのは、「専業主婦として生きる」ことをポジティブにとらえている点だ。

 著書に『働く女子のキャリア格差』がある静岡県立大学准教授の国保祥子さん(経営学)は、こう指摘する。

「今の時代、『不本意専業主婦・主夫』は以前よりも生きづらくなっていると思います。でも、働く人も自分の生活はこれでいいのかな、と悩んでいる。結局、自分の選択が腹落ちしていれば、他人の選択も尊重できるし、納得して生きていける気がします」

(AERA編集部・古田真梨子)

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