ずっと専業主婦でいる人は少なくなった。そのときの家族や自分の状態に合わせ、臨機応変に働く時代になった(photo 写真映像部・上田泰世)
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 働き方が多様化し、転職も珍しくはなくなった。バリキャリからフリーランスへ。専業主婦からバリキャリへ。その時の自分と家族に合わせて、働き方を軽やかに選択する人が増えている。

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 東京都の女性(42)は最近、仕事をやめて専業主婦になった。子どもと向き合う時間がほしかったからだ。

 大学卒業後、大手メーカーに就職した。3年間の地方勤務を経て、東京に戻り、営業企画やeコマースを担当する部署で働いていたときに結婚。勤務先の両立支援策が充実していたこともあり、3回育休を取って、3回復職した。

「やりがいはありましたが、日々が本当に大変で慌ただしかったです。常に後ろ髪ひかれる思いで仕事に向かっていました」

 働き方を変えようと2022年秋に退職。eコマースの業務委託としてフリーランスで仕事をしていたが、1年ほど経ったときに学生時代の友人に声をかけられて、ベンチャー企業に部長職で入社した。当初はリモート勤務が可能で、自分のペースで働けるとイメージしていたが、想像の何倍も忙しく、自宅で深夜までパソコンに向かう日々が始まった。

家族の心がすさんでいく

 家の中を片づける余裕はなく、常に散らかっていて、家族みんなの心がすさんでいくのがわかった。朝、子どもが登校を渋っても、ゆっくり話を聞く時間がなく、引きずるようにして学校まで連れて行き、仕事に向かった。自宅でオンラインミーティングをしながら、閉め切った扉の向こうのリビングで、子どもがひとりテレビを観ていることも多かったという。

「ずっとこれでいいんだろうか、と悩んでいて、いったん今の生活を改めようと思ったんです」

 子どもたちに仕事をやめる決断を伝えると、喜ぶかと思いきや、「大丈夫? うち、貧乏にならない?」と真面目な顔で返されたことは、なんだか可笑しかった。

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