石破首相は「流れをつくる政治家」か?
2017年9月25日、当時の安倍晋三政権は衆院解散を宣言した。「国難突破解散」と名付け、北朝鮮が発射したミサイル問題や、消費税の使途の変更、少子化問題などを国民に問うことを理由とした。
しかも安倍元首相自身が、森友・加計学園問題について野党から厳しい追及を受けていた。NHKの世論調査による7月の内閣支持率は35%で、不支持率は48%まで高まった。
同月に行われた都議選では、自民党は57議席から23議席に激減した。にもかかわらず、安倍元首相が躊躇なく衆院解散を決意したのは、9月初めに山尾氏の不倫問題が週刊文春にすっぱ抜かれ、民進党(当時)から離党者が続出するなど混乱に陥ったことも影響したと言われている。結果、自民党は選挙前と同じく284議席を獲得し、自公合わせて3分の2超えの議席を守った。
そして現在、状況が当時と酷似している。アメリカからはトランプ関税問題という国難が襲来し、山尾氏を参院選比例区に公認内定したことで、国民民主党の支持率は一気に下落した。さらに野党は参院選の準備に追われており、衆院選の準備まで手がまわらない状況だ。
こうした状況で立憲民主党が内閣不信任案を出すことは、まさに敵に塩を送るに等しいといえる。しかも少数与党の下で行う次期参院選は事実上の政権選択選挙と位置付けられており、民意を問うためにわざわざ衆院を解散する必要性は乏しい。
それでも安倍元首相なら2017年当時と同様に、内閣不信任決議案の可決なしに首相の判断で解散できる「7条解散」に打って出たかもしれない。石破首相は「流れをつくる政治家」か「そうでない政治家」なのか、試されている。
(政治ジャーナリスト・安積明子)
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