議席増に向け、ターゲットは国民民主党

 石破首相も、勝機をうかがっているのかもしれない。少数与党の強みは、1議席でも増えれば勝ちになるという点だ。その場合には、昨年10月の衆院選で7議席から28議席へ4倍となる大躍進を遂げた国民民主党をターゲットにするに違いない。同党は自民党から離れた保守票を吸い込んだ。

 実際、11月には同党の玉木雄一郎代表の女性スキャンダルが発覚し、玉木氏は3カ月の役職停止に処せられた。新人議員の不祥事も目立った。岡野純子氏のパワハラ問題や平岩征樹氏の本名を偽った不倫問題、丹野みどり氏には秘書へのパワハラ報道問題に加え、安全保障情報漏洩についての疑惑もある。

 次期参院選の公認を巡っては、国会議員経験者の抜擢が問題視された。当初、大阪選挙区から出馬を希望した足立康史氏については、連合が強く反対した。山尾(菅野)志桜里氏の比例区擁立については、両院議員総会で大いに紛糾した。にもかかわらず玉木氏は5月14日、須藤元気氏と薬師寺道代氏とともに2人の比例区での追加公認を発表した。

 もちろん世論も反発した。公認内定発表直後(5月17、18日)に行われた共同通信の世論調査では、国民民主党の支持率は13.2%で、前月の18.4%より5.2ポイント減少した。JNNの世論調査(5月31日、6月1日)では前回比3.4ポイント減、ANNの世論調査(6月7、8日)では同4.2ポイント減少し、支持者離れは明らかになっている。

 こうした事実は石破首相をして、“伝家の宝刀”を抜かせる条件にもなる。何より自民党には「成功体験」があるからだ。

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