1975年2月。現役を引退し、監督となった長嶋茂雄さん。このシーズンは球団初となる最下位になったが、翌76年にはリーグ優勝を果たした(写真:日刊スポーツ)

監督復帰で3度の優勝

 巨人、そして長嶋さんの栄華は永遠には続かない。

 巨人のV9が終わったのは73年で、長嶋さんが「我が巨人軍は永久に不滅です」と述べ、現役を引退したのが74年。この時期に高度経済成長も終焉を迎えたと言われている。

 89年に昭和天皇が崩御し、時代は平成に変わった。日本経済がバブル崩壊を迎える中、長嶋さんはサッカーJリーグの開幕を控え、野球人気低下の不安が広がっていた92年に監督復帰。リーグ優勝3度(日本一2回)を達成し、2001年に監督を勇退。04年に脳こうそくで倒れてからは、後遺症で右半身にまひが残るなか、長年リハビリに励んできた。

時代、人々は変化し…

 時代は平成から令和へ。趣味嗜好は多様化し、サッカー以外のスポーツも注目を集めるように。地上波の巨人戦の全国中継は減少し、プロ野球も巨人一強から、各地域に根付いた球団が人気を得るようになった。日本経済が低迷から抜け出す気配はなく、高度経済成長再び、は夢物語だ。

 長嶋さんは崇拝の対象という野球評論家の江本孟紀さんはこう話す。「長嶋さんが亡くなられて、昭和が終わったと感じています。今後こういったスターが生まれることは想像できません。戦後から日本が立ち直っていく時代背景の中で、みんなが希望を持つ象徴的な存在でした」

(編集部/秦正理、川口穣、岩田智博)

AERA 2025年6月16日号より抜粋

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