
企業の女性管理職登用が進む中、内部登用のみでは人材が不足している。転職市場ではハイキャリアの女性管理職を採用する動きに加え、“管理職予備軍”とされる子育て世代も注目されている。AERA 2025年6月9日号より。
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女性の転職市場の最近の動向で、もうひとつ注目すべきは、30~40代の“管理職予備軍”の成約数が増加傾向にある点だ。その理由についてニッセイ基礎研究所准主任研究員の坊美生子さんは、企業側と女性側の双方のキャリア志向が一致している点を指摘する。
「会社に対する理解を深めてもらってから昇進させたい、本人が仕事をしやすいよう実務経験を積んでから登用したい、という点が大きいと考えられます。一方、予備軍の女性たちは、現在働いている職場では女性管理職のロールモデルが不在でイメージが持てないため、より女性が活躍しやすい職場に転職したい、といった動機があります」
柔軟な働き方が重要
実際、求職側の管理職層の女性たちからは、長時間労働ではないことや、在宅勤務やフレックスタイムなど「柔軟な働き方」ができるかどうかが、転職先を選ぶ上で重要な条件になっているという。
働き方を考える上で欠かせない観点は、育児と仕事の両立だ。
「10年近く前までは小さい子どもがいると、ハンディになるから転職は無理と考える女性が多数派でしたが、最近の傾向として、育児と仕事が両立できることを前提に転職先を探す女性が増えています。『育児があるからキャリアアップを諦める』のではなく、『育児をしながらキャリアアップできる職場を探す』という意識に変化しつつあります」(坊さん)
そう話す坊さんは現在6歳になる子どもの子育て真っ只中だ。
「周りのお母さんたちと話をしていても、育児をしている人は働き方への関心がすごく高いと感じる」と話す。
「ママ友どうしの会話でも、『うちの職場は週何回、在宅勤務できる』といった情報交換が盛んです。コロナ禍を経て、在宅勤務やフレックス勤務などを組み合わせて柔軟な働き方がしやすい企業と、そうではない企業の格差が大きくなっていることが、ママ友のネットワークを通じて『見える化』されているように感じています」