5月31日、アイリスオーヤマは5キロ2000円での政府備蓄米を販売をスタートした=米倉昭仁撮影
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 5キロ2000円の「備蓄米」販売がスタートしている。備蓄米がいくらで流通するか、果たして手に入るのか、米の価格は下がるのか。“コメ担当大臣”は「おいしい」と言うが、肝心の「古古古古米」の味をほとんどの人はまだ知らない。

【写真】5キロ2000円の政府備蓄米を求め朝から並ぶ人々

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放出される令和4年産と3年産

 我々は、高騰を続ける米の価格に翻弄されてきた。国産米の価格はいまや5キロ4000円超、税込みで5000円近くすることもザラだ。だが、これから出回る予定の備蓄米の小売価格は、5キロ2000円(税別)程度となる見込みだという。5月31日にはアイリスオーヤマが同価格の備蓄米販売をスタートした。

 SNSでは「小泉進次郎農林水産大臣、ありがとう!」という声も上がった。

 いっぽうで、「味」に対して、冷ややかなコメントもあった。

「古米は食べますが、古古古米は嫌です。それは本来、家畜の飼料などとして払い下げられる米。2000円で国民に買わせるのはいかがなものか」

 国民民主党の玉木雄一郎代表は「あと1年たったら動物の餌」と発言、陳謝することとなったが、実際に備蓄米は4年間保存されたのち、飼料用などに売却される。収穫から時間が経てば、米の質は経年劣化していくからだ。

 新米の食品表示基準に基づくと、令和7(2025)年現在、6(24)年産は古米、5(23)年産は古古米、4(22)年産は古古古米、3(21)年産は古古古古米。

 今回、放出されるのは令和4年産と3年産の備蓄米、計30万トン。政府は60キロ1万700円(税別)で売り渡す。

5月31日、アイリスオーヤマグループのホームセンター「ユニディ松戸ときわ平店」には政府備蓄米を求めて多くの人が並んだ。朝6時時点で100人以上が並び、65枚の整理券の配布が終了してしまい残念がる人も=米倉昭仁撮影

米店は古米の「質」を懸念

 品質について、首都圏のある米店は、「令和4年産米が限界では」と漏らす。

「古い米を販売して、クレームが相次ぐような事態になれば、店の信用に傷がつく」(首都圏のある米店)

 千葉県船橋市で米店を営み、お米マイスターでもある牧野基明さんもこう話した。

「令和3年産は『古』が4つもつく古い米です。こんな米を扱った経験はないし、どんな質の米なのか、確実なところはわからない」

 そんな不安を解消するかのように、小泉農水相は29日、農水省主催の備蓄米試食会に参加した。令和6~3年産のそれぞれの米で作られたおにぎりを試食し、「どれを食べてもおいしい。それほど味などの違いを感じなかった」と語った。

これまでの放出米より古い

 政府は3月と4月、計3回にわたり計約31万トン(令和6、5年産)の備蓄米を放出したが、その9割以上を全国農業協同組合連合会(JA全農)が落札した。だが、放出後も米の価格は下がらず、効果もわからず、批判が相次いだ。4回目となる今回は、随意契約で令和4、3年産の30万トンを放出する。つまり、以前よりも放出される米は古い。

アイリスオーヤマが販売を開始した政府備蓄米=米倉昭仁撮影
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