牧野基明さんは小学校で「お米授業」の講師を務めるほか、稲作体験や米の生産体験のイベントも開催する=米倉昭仁撮影

「『ざる上げ』はNGです。水を吸った古米を乾燥させたら、割れてしまう」

 炊く際の水量も調整すべきだという。洗米後、水を吸って体積が増した米を計量カップで量り、たとえば、3合半だったら、同量の水を加えて炊飯する。炊き上がり具合をみて、まだ硬ければ、次回は水量を3分の1カップ増やす。

山形県産「雪若丸」の玄米。備蓄米はこの状態で低温倉庫に保管されている=米倉昭仁撮影

新米は軟水、古米は硬水

 水の種類も変えるのがよいようだ。

「新米であれば、ミネラルの少ない『軟水』で炊くのがおすすめ。米本来の味が楽しめます。古米の場合は逆に水道水や『硬水』で炊くと、独特の風味をやわらげることができます」

 食感も小さな工夫で改善することができる。古米は「粘り」に欠けるので、もち米をまぜて炊くのがよいという。古米2に対してもち米1など、好みの割合を探るとよい。もち米は通常の米(うるち米)よりも約2倍、吸水するので、そのぶん水量を多めにする必要がある。

 見栄えでいうなら、古米は「照り」も弱い。はちみつやサラダ油を少し加えて炊くと、照りが増す。コツは炊飯の直前に入れて、かきまぜること。吸水前に入れてしまうと、米粒がはちみつやサラダ油でコーティングされ、吸水が妨げられる。はちみつは入れすぎると、下に沈んで、釜の底が焦げてしまう。

朝早く店頭に並び、政府備蓄米を買い求める人=米倉昭仁撮影

買いだめは得策ではない

 保管にも注意が必要だという。古米を大量に買い込んで時間が経てば、米粒が割れ、どんどんまずくなる。特に、光が当たる場所は要注意だ。

「冷蔵庫での保管がおすすめですが、なかなかそうはいかないでしょう。古米はこまめに購入して、早めに食べきることが大切です」

 令和3年産の備蓄米は8月まで店頭に並ぶ予定だ。

 同年産は5キロ1800円ほどで販売される見込みというが、それは本当に多くの人にとって買いなのか。実際に食べてみなければわからない。

 米だけはおいしく食べたい、そう願う人は多いだろう。備蓄米が手に入ったそのときは、ぜひ炊き方を参考にしてほしい。

(AERA編集部・米倉昭仁)

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