
性被害に遭ったことを自身が認識すること、周囲に相談することは大きなハードルがある。また組織内で起こった場合の問題点を性被害の当事者であるフォトジャーナリストの安田菜津紀さんが語りました。AERA 2025年6月2日号より。
【写真】シリア取材中の安田さん。「現地で広河氏と鉢合わせしないか、すごく怖かった」
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フォトジャーナリストの安田菜津紀さん(38)は今年2月、自身が“性暴力サバイバー”であると公表した。約20年前、報道写真誌「DAYS JAPAN」編集部で学生ボランティアをしていた際、当時編集長だった広河隆一氏による性被害に遭ったという。
──公表後、どのような声が寄せられましたか。
「安田さんがサバイバーだとは思いませんでした」「元気そうに見える=苦しんでいないとは限らないと気づいた」という声が多く、公表には一定の意義があったとポジティブに受け止めました。
一方で、「安田はクルド人のシンパだから消えろ」「死ね」といったコメントもありました。普段なら気にしないのですが、性被害という自分の心の奥の繊細な部分と紐づける形で言われると、すごく嫌な気持ちになりました。
──ご自身の心や体への影響はありませんでしたか。
公表後、被害の記憶が頻繁にフラッシュバックするようになりました。被害を言語化するために、当時のことを何度も思い出さなければならなかったからだと思います。
フラッシュバックが起こると、被害に遭っている最中と同じように体がまったく動かなくなります。道を歩いていたら、突然不安に襲われてパニックを起こすこともあり、たまりかねてトラウマ治療の専門家に助けを求めました。
これまで性被害についての取材経験はありましたが、当事者の心身にこんなにも重くのしかかるものなんだと身をもって知りました。20年近く経っても加害者の支配から抜け出せていない自分が、ものすごくショックでした。
──広河氏に対してはどのような思いを抱いていますか。