「本妻」にこだわらない理由

 みつさんが結婚にこだわらず、「不倫」や「本妻」という立場を気にしないのは、勝ち負けで捉えていないからだと考えれば腑に落ちる。

「ヒエラルキーが好きじゃないというか、人と比べたりすることが嫌なんですよね。わかりやすい例で言うと、『お父さんとお母さんどっちが好き?』みたいな。比べられないじゃないですか」

 人間関係を同列に見ていれば、前妻の子どもたちと会うのも自然なことだ。

 みつさんの思考は、極めて一貫していた。

宇宙はめっちゃ広い

「宇宙は、めっちゃ広いじゃないですか。なのに、私たちのような生き物が存在している惑星は、条件的に地球だけってすごいことだなと思うんです。さらにその中の小さな島国で、長くても100年ほどしか生きられないわけじゃないですか。全宇宙からすれば光の速さぐらいの短い時間しかない中で、幸せとかお金という概念から解き放たれて、自由になりたいという気持ちはありますね」

 多くの人は、厳しい現実の中で「好きな人と一緒にいれば幸せ」という時間を自ら終わせてしまう。ひょっとすると、この魔法を解かないことが、幸せの秘訣なのかもしれない。

 みつさんが醸し出す穏やかさの根底に、私は哲学的な深みを感じた。

(構成/ライター・インベカヲリ☆)

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