
地方で働く人のセクハラ相談では、何年も悩んでいる人や事例数が多い傾向にある。地方に限らず、プライベートな会話が多い職場や小さな企業でセクハラが起きるかどうかの「分かれ道」とは。AERA 2025年5月19日号より。
【図を見る】企業規模か小さくなるほどセクハラ防止対策が無い??
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都市部に比べ、セクハラ被害を言いだしにくい構造があるのも地方の課題だ。
日本政策金融公庫の総研レポート(2015年)によると、地方圏は中小企業が99.9%を占め、職場の組織が小さい。企業の規模が小さくなるほど、セクハラ防止対策が「無い」割合が高いことは、厚生労働省の令和5年度雇用均等基本調査でも明らかだ。
さらに働く場が少なく、自分のスキルを生かした上で希望の条件が叶う転職はそう簡単ではない。そのため被害を訴えると仕事に支障が出る、仕事を失うのではないか。そう考える人は多い。
三重県に住む公務員の女性は20年前、出張中に上司から「ホテルの部屋でコーヒーを飲もう」と誘われ、出張後も「帰宅せずに別の場所に行こう」と誘われた。対応に困ってしまい、職場に伝えたが、「直属の上司だったので、仕事がしづらくなった」と振り返る。日本ハラスメント協会代表理事の村嵜要さんが言う。
「女性が声を上げてセクハラが認定されても、当事者の業務上の距離を離す余裕がない組織もあります。セクハラ認定後も同じ職場で働き続ければ、気まずいですし、顔を見たくないはずです。会社に居続けるとセクハラに遭う。転職したくても、特技を生かした仕事ができる職場が近くにない。『自分さえ我慢すれば済む』とのみ込みがちなのです」
その結果、深刻な性被害につながるケースもあるだけに、地方に限らず、アットホームでプライベートな話題も飛び交う職場におけるセクハラ対策は急務だ。
女性部下を私物化
まずはセクハラが起きるかどうかの「分かれ道」を知っておくことだという。
「女性を『職場の人』と見なさず、『プライベートで仲良くしたい女性』として扱っていないでしょうか」(村嵜さん)
たとえば、こんなケースだ。
男性上司と女性部下の仲が良いコンビがいた。二人は職場でよく業務についての議論をしていて、男性上司が部下をよく面倒をみて、「かわいがっている」ことは明白だった。それがある日突然、上司は部下に「君の写真を送って」とメールをした──。