大型連休に伴う9連戦(うち1試合は雨天中止)最終戦となる5月7日の広島戦(神宮)。3対3と同点の9回表、再び『夢色傘』に乗って登板した石山だったが、1死から途中出場の堂林翔太に高めに浮いた変化球をレフトスタンドへ運ばれてしまう。さらにツーアウトから2番の菊池涼介にもソロ本塁打を被弾。開幕からの連続無失点が途切れ、今季初黒星を喫した。

「やっぱり打たれるとめちゃめちゃ辛いんで。楽しい思い出はほぼなくて、ずっと耐えてる感じです」

 以前、自身の野球人生をそんなふうに振り返ったことのある石山だが、何度もそうした「辛さ」を乗り越えてきた。石山より8年遅れてドラフト1位で入団し、中継ぎとしてヤクルトのブルペンを支えている木澤尚文が言う。

「たとえば試合で打たれてしまっても、まったく表情を変えずにロッカーで過ごしている。本当は悔しいと思うんですけど、そういうところを周りに感じさせない平静の装い方というか、そういうマインド的なところはみんな見習っていると思います」

 現役時代に球団記録の通算286セーブをマークした往年の「燕の守護神」髙津監督も「リリーフは打たれた次の日、次のゲームが非常に大事だと思うので、また次のゲームに期待したいと思います」と、実績十分なベテランの雪辱に期待を寄せる。

 社会人のヤマハからドラフト1位で2013年に入団して、これまでに積み上げたセーブ数は現在「96」。あと1つで球団歴代3位のトニー・バーネット(現ヤクルト編成部アドバイザー)に並び、4つで連盟表彰の対象となる通算100セーブに到達する。

 年下ながらドラフト同期(2位)の「ライアン」こと小川泰弘が2023年に通算100勝を達成した際には「ライアンは100勝を達成して、自分には何も残っていない。やっぱりそこは悔しいなって思いますし、何か成し遂げたいなっていう気持ちはすごくあります」と話していただけに、髙津監督、林昌勇に次いで球団史上3人目となるこの通算100セーブには特別な思いがあるはずだ。

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