ヤクルトの守護神・石山泰稚(写真提供・日刊スポーツ)
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 神宮球場に集う燕党にとってちょっと懐かしい曲が流れたのは4月30日、DeNAを相手に3点をリードした東京ヤクルトスワローズが、9回表の守りに就こうとしていた時のことだった。

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 以前も登場曲(出囃子)として使用していた泉佳伸の『夢色傘 feat. Alice』(以下『夢色傘』)とともにマウンドに上がったのは、今シーズンの序盤から再び守護神の座を託されるようになったプロ13年目、36歳のベテラン石山泰稚。1死一、二塁のピンチを招きながらも後続を断ち、今季5つ目のセーブを挙げた。

「いつ以来ですかね? 自分でもあんまり把握してなくて。きっかけとかは別になくて、なんとなく戻したかったんです。僕自身は(マウンドに上がる時は)聴いてないんですけどね(笑)」

 そうドライに話す石山だが、自身のために「作ってもらった」というこの曲は、彼の活躍と切っても切り離せない。登場曲として使い始めて2年目の2017年にセットアッパーとして自己最多タイの24ホールドポイント、翌2018年には守護神として、これも自己最多にして球団歴代5位タイ(当時)の35セーブを挙げているからだ。

 国内FA権を取得した2020年にはコロナ禍による短縮シーズンの中でセ・リーグ3位の20セーブをマークし、オフに出来高も含め総額7億円(推定)の4年契約を結んだ。だが、2021年の途中で守護神の座を明け渡すとここ2年は防御率4点台と苦しみ、いつしか出囃子も違う曲に変わっていた。

 年齢も30代半ばに差し掛かり、ストレートでグイグイ押してスライダーやフォークで打ち取るスタイルに限界を感じ、新たにワンシームやカーブをレパートリーに加えて投球の幅を広げるなど、モデルチェンジも図った。昨年は4月末までに1勝6ホールド、2セーブ、防御率1.04の好成績を収めるも、それも長続きはしなかった。その反省を踏まえ、今年はプロ13年目にして初めてという調整法でシーズンに臨んだ。

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