ドジャースの山本は「中6日」で好成績をあげている(日刊スポーツ)

投手の出力が上がったのに登板間隔は従来通り

 現役時代にメジャーのマウンドで投げたこともある球界OBは、メジャーで主流の「中4日」の登板間隔がその要因だと指摘する。

「トレーニングの進歩で出力が上がり、直球の平均球速が150キロを軽く超え、多彩な変化球を操る投手が一気に増えました。それでも従来通りの中4日の登板では、体のケアが追いつかず、肩や肘、下半身に負担がかかり続ける。僕も日本では中6日の登板間隔が主流でしたが、メジャーでは中4日で投げました。すると体の疲れ具合がまったく違う。メジャーでは80~90球に球数制限していましたが、それなら中6日で120球以上投げたほうが楽です」

 MLBの使用球はNPB公式球と違って滑りやすく、ボールの大きさも均一でないことから、肩や肘に負担がかかる。マウンドも硬いので下半身の故障が多い。さらに、メジャーのルール改正も投手の負担をさらに重くしている。メジャーを取材するスポーツ紙記者はこう語る。

「制限時間以内に投げなければいけないピッチクロックが23年から導入されたことで、投手たちが口をそろえて、『時間と戦っているようでなかなか慣れない。自分の間合いで投げられない影響からか、体の張りが以前よりひどくなっている』と話していたのが印象的でした。得点がたくさん入るほうが盛り上がるし集客アップが見込めるからか、メジャーは近年、次々と打者有利のルール改正をしています。ピッチクロックだけでなく、けん制の回数を制限し、ホームベース以外のすべてのベースを拡大するなど、投手には不利な制度が次々に導入されている。投手を守るため、従来よりも登板間隔を空けるなどの対策を考えたほうがいいと思います」

「中6日」で結果を出しているドジャース

 メジャーでは「中4日」の登板間隔が主流な中で、他球団と一線を画する起用法をしているのがドジャースだ。山本由伸、佐々木朗希は今季登板した全試合で中6日の登板間隔をとって、マウンドに上がっている。

「ドジャースはタイラー・グラスノー、ブレイク・スネル、クレイトン・カーショウと、主戦として計算していた先発陣が故障で離脱して、先発陣の層が厚いとは言えない状況です。それでも成長過程の佐々木だけでなく、山本も登板間隔を短くしないのは、故障のリスクを考慮した首脳陣の判断です。この起用法に米国の解説者からは、『中6日の登板間隔は過保護だ』と批判する声が上がっていましたが、投手のコンディション作りを考えれば理にかなっている。投手が大きな負担を強いられる現代の野球に合わせ、ドジャースの先発起用を参考にする球団は今後増えると思います」(米国で取材する通信員)

 メジャー移籍2年目の山本は今季7試合登板で4勝2敗、リーグ1位の防御率0.90と圧巻の数字を残している。佐々木は7試合登板で1勝1敗、防御率3.86。登板を重ねてパフォーマンスが上がっており、今月4日のブレーブス戦でメジャー初勝利を挙げた。日本では主流となっている先発投手の「中6日登板」が、メジャーでもスタンダードになる時代がやってくるだろうか。

(今川秀悟)

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