ドラフトでは1位指名で巨人阪神が競合。巨人が当たりくじを引いた。ちなみに、阪神が「外れ1位」で指名したのが中央大の森下翔太だった。大きな期待を背負った浅野は非凡な打撃センスを見せる。23年に巨人では15年の岡本和真以来8年ぶりの高卒1年目でのプロ初アーチを放つなど24試合に出場した。昨年は8月にヘルナンデスが左手首骨折で離脱したため、1軍に昇格。8月14日の阪神戦(東京ドーム)で満塁アーチを放つなど勝負強い打撃で、40試合出場して打率.240、3本塁打、18打点をマーク。4年ぶりのリーグ優勝に貢献した。

高卒ルーキーで活躍できたケースは一握り

 ただ、浅野をよく知る関係者は心配な点があったという。

「昨年のシーズン後に、一人で自主トレするという記事が出たじゃないですか。腰痛持ちだったので周りに気を使ったのかなって。優しい性格なんですよ。解説者の人に『プライドが高い』とか言われていましたが、全然そんなことない。指導者の助言をしっかり聞くし、真面目すぎるのでその助言を鵜呑みにしてしまう傾向がある。それに、自己評価が低いんですよね。もっと自信を持ってほしいんですけど、高校時代から謙虚で人を押しのけて前に出るタイプではない。プロの世界は競争が激しいですし、巨人はマスコミの注目度が高い。結果が出ずに自信を失うのが心配でしたが…」

 プロ野球の世界は厳しい。将来を嘱望されたドラフト1位の高卒ルーキーで活躍できたケースは一握りだ。大阪桐蔭で投打の二刀流で活躍し、3度の全国制覇を達成した根尾昂(中日)はドラフト1位で4球団が競合したが、野手でプロ入り後は伸び悩み、22年のシーズン途中に投手に転向。再スタートを切ったが、1軍に定着できていない。早実で高校通算111本塁打をマークし、ドラフト1位で高校生史上最多タイの7球団が指名した清宮幸太郎(日本ハム)も順風満帆な歩みだったわけではない。確実性が上がらず、高卒4年目の21年はプロ入り後初の1軍出場なしに終わった。「トレード要員」として報じられた時期があったが、新庄剛志監督の下で覚醒する。故障が多いのがネックだが、昨年は89試合出場で打率.300、15本塁打、51打点をマーク。今年は開幕から全試合に出場し、チームの中心選手として期待されている。

 前出のセリーグ球団スカウトは、こう語る。

次のページ 一気に覚醒する可能性も十分。大事なのは…