日本の企業をみてみると、東証プライムの全業種のROEの平均値は9.6%となっています(2024年3月期決算短信集計より)。また、過去のデータをみると、5~10%で推移しています。
あくまで目安ですが、ROEが10~15%あれば、株主にとって見返りの多い優秀な会社であるといえるでしょう。
投資家は、株主資本を上手に使って、より効率的に利益を生み出せそうな会社を複数の業種の中から探し出します。ROEは、そのための重要な判断材料であり、ROAと同じく、業種を越えて投資先を比較検討できる便利な指標なのです。
ROEが高ければすべていいわけではない
さて、ここまでの説明を聞くと、皆さんが投資家だったら、1%でもROEの高い会社に投資したいと思われるのではないでしょうか。
その判断は間違っていませんが、ただし注意が必要です。ROEが(同業他社に比べ)異常に高い会社には、表面からはみえない、カラクリが潜んでいる場合があるからです。
その仕組みをみてみましょう。ROEは「自己資本→資産→売上→利益」のサイクルの効率性を表したものです。このうち「資産→売上→利益」の流れは、すでにみましたね。そう、ROAです。このROAのサイクルに「自己資本→資産」の要素を加えたものが、ROEです。

さらに細かく分解していきます。ROAのうち、「資産→売上」は総資産回転率を、「売上→利益」は売上高利益率を表しました。では新たに加わった「自己資本→資産」の要素は、何を表すのでしょうか。
端的にいうと、これは負債の大きさ、つまり借金の大きさを表しています。貸借対照表を思い出してください。表の左側と右側の合計額は必ず一致する、つまり「資産=負債+純資産」でしたね。
先ほどの「自己資本→資産」の要素は、「資産のうち、どれだけの金額を自己資本(純資産)から調達できているか」を表します。
これは裏返せば、「資産のうち、どれだけの金額を他人資本(負債)によってまかなっているか」を意味することにお気づきでしょうか。