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 GWが明け、5月中旬は日本企業の決算発表が集中するシーズン。もしあなたが「決算書を見てどこかに投資しようかな」と考えているのなら、この数値をよく見るべきかもしれません。グロービス経営大学院教授の佐伯良隆氏が解説します(佐伯良隆著『決算書「分析」超入門2025』から抜粋・編集)。

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株主が会社の収益性を判断する数値

 資金提供者のうち、特に「株主の視点」に特化した指標があります。それが「自己資本利益率(ROE=Return on Equity<自己資本>)」です。

 ROAは資産に対する利益の大小をみるものですが、ROEは、株主から集めたお金に対する利益の大きさをみます。

 株式会社という仕組みの本質に則れば、会社の所有者は経営者ではなく、株主です。従って、株式会社の最大の目的は、会社を所有する人(=株主)の利益を最大化することといっても過言ではありません。

 つまり株主からみれば、「自分が出資したお金を活用して、どれだけ大きな利益を生み出せるか」が、会社を評価する最大のポイントといえます。

 ROEは、「利益÷自己資本(純資産)」によって求められます(※ 厳密には、短信では分母に「株主資本」を、分子に「親会社帰属利益」を使用します)。

 分母となる自己資本には、一般的には貸借対照表の「純資産」の中の「株主資本額」が使われます。また、分子となる利益には、損益計算書の「当期純利益」を用います。

 ROAには、株主から集めたお金以外に、銀行などから借りた「負債」も含まれていましたが、ROEでは自己資本(純資産)に限定することで、「株主に帰属するお金を使って、どれだけ効率的に利益を出せたか」を測ることができます。

ROEが高いほど見返りが大きい

 ROEは、株主などの投資家にとって、投資先の会社を決めるうえでの重要な指標となります。ROEの数値が高いほど、投資した資本に対して効率よく利益を出している、つまり「株主に対してより多くの見返りを与えている会社」といえるからです。

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