演技に厳しい目を向けられてきた
AKB48時代からドラマや映画に出演し、有名映画監督などからその演技力を絶賛されてきた前田。一方で、元「国民的大所帯アイドルグループの絶対的センター」という日本芸能界の歴史を振り返っても稀な輝かしい経歴を持つだけに、演技に関して彼女ほど大衆から厳しい目を向けられてきた俳優も珍しいように思う。
それでも役者にこだわり続け、主演・脇役問わず出演作を増やし、そして2021年のNODA・MAP公演「フェイクスピア」や22年のミュージカル「夜の女たち」をはじめ舞台経験も積んできたことで、演技派としてより広く認められる存在となった。前出の北村氏が話す。
「爆発したな、一皮むけて次のステージに進んだな、と感じたのは22年公開の映画『もっと超越した所へ。』ですね。AKB48で不動のセンターを務めた元トップアイドル、というイメージをがらりと塗り替え、しっかり実力の伴った女優であることを公に見せてくれたと感じました。それまで出演していた作品や役柄に迷いが感じられていた、というわけでもないのですが、アイドル出身の方が持つ独特の『求められていることに忠実に応える姿勢』のようなものが、良い意味で剥ぎ取られたのではないかな、と。前田さん自身、役を演じることを心底楽しんでいるようにも見えて、観ている側も純粋に『女優・前田敦子』を応援する準備を整えさせてくれたな、という気がしました」
6歳長男と暮らすママタレ
30歳の節目を前に長年所属した大手芸能事務所「太田プロダクション」を退所し、現在フリーで活動する前田。プライベートでは18年に俳優の勝地涼と結婚し、翌年に第1子男児を出産。その後、21年4月に勝地との離婚を公表すると、親権は前田が持った。エンタメ誌の編集者が言う。
「現在6歳の長男と暮らす前田さんは、インタビューで積極的に息子さんとのエピソードを話していて、穏やかで微笑ましい日常が垣間見えます。22年4月~12月放送のフジテレビ系昼の帯番組『ポップUP!』で初となる情報番組レギュラーを務めた際には、ディズニーロケでリポーターに初挑戦するなど、新たな一面を見せて話題となりました。昨年2月には日本テレビ系朝の帯番組『ZIP!』の月間パーソナリティーも務めていましたし、今後はママタレとして情報番組で見る機会も増えるかもしれません」
まだ33歳ながら、仕事でもプライベートでも濃縮した人生を歩んできた印象の前田。さまざまな経験が今の演技に説得力をもたらしているようだ。
(小林保子)