専門家の指導はメリットだが
部活中、新しい顧問に「どんな練習をすればいいですか」と尋ねたが、返ってきた言葉は「先生にもわからん」。しかし、不満は口にできなかった。子どもながらに、顧問の負担と「適材適所」という言葉の意味を実感していたからだ。
「普段運動をしない美術の先生が運動部の顧問を務めるのはきつかったと思います。『先生、もっと力を入れてください』とは言えなかった」(同)
部活が地域移行して、その道の経験者が指導するようになれば、自分が経験したような不幸なマッチングは避けられるだろう。ヨウコさんは子どもたちが専門家の指導を受けられるようになるメリットを期待しつつも、保護者の手間が増えることを心配する。
「子どもがクラブチームに入ったら、その活動を手伝うことになるのは、親ですよね」(同)
学校外なら保護者が送迎?
部活動では生徒が通う学校が主な活動場所だった。ところが、地域移行後は、クラブチームが確保したグラウンドに移動しなければならない。これまで、休日の練習試合などに限られていた保護者の送迎が、地域移行後は常態化するのではないか。
共働きが多い現代だ。コンスタントに送迎はできないからと、子どもをクラブチームに入れるのを躊躇する保護者も出てくるだろう。
「これまで部活をやりたい子どもには、誰でもチャンスがありました。でも、地域移行が進めば、財力と時間的な余裕がある親の子どもだけがスポーツを経験することができ、クラブチームで伸びていくことになります。果たしてそれでいいのでしょうか」(同)
学校が管轄する部活だからこそ、誰もがさまざまな活動に親しむことができた。その部活動を学校から切り離すということは、「部活動」のよさは、多かれ少なかれ失われるということなのかもしれない。
(AERA編集部・米倉昭仁)