(写真映像部・和仁貢介)
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 「部活動」を学校から地域に移行する試みが進んでいる。一部の教育関係者は、地域移行の受け皿になるクラブチームでの活動の「過熱」を懸念する。

【ココがヘンだよ】部活を地域に丸投げ? 「地域移行」の大問題【2分で解説】

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「ガンガン練習」で無理を重ねれば

「勝利至上主義というか、強くなるために、土曜日も日曜日も1日中ガンガン子どもたちに練習させるクラブチームがある。練習で無理を重ねれば、子どもの体が壊れてしまいます」

 深刻な表情でそう語るのは、中学校教員のシゲルさん(仮名、50代、東京都)だ。

 学校の管轄する部活動を地域に移行する動きは、休日の部活動から段階的に進んでいる。

 シゲルさんは「地域移行」の実態を懸念する。ここ数年で「スポーツ障害」を負ったとみられる子どもを目にするようになった。スポーツ障害とは、練習などにより繰り返し負荷が加わることで起こる関節や靭帯、骨などの故障のことだ。

 シゲルさんの学年にいたA君もその一人だった。

野球が大好きな少年は

「中学校に入学したときから、『甲子園を目指す』と言っていた、野球が大好きな子でした」(シゲルさん)

 平日は中学校の野球部で2時間ほど練習し、休日は主にクラブチームで活動した。野球部でもクラブチームでもエースクラスのピッチャーとして活躍した。

 ところが、2年次の後半から、A君の表情から明るさが消えた。A君は担任に、こう漏らした。

「腕を上げようとすると、肩が痛い」

 A君の不調は学年会議で共有され、シゲルさんも事態を知った。養護教員にも相談した結果、A君には部活でできるだけ投げさせないことにしたという。

教員は運営に口を出せない

 だが、クラブチームの運営に教員が口出しをすることは難しい。A君の状態は、学校からクラブチームにも伝えられたが、クラブチームでの練習は続いたようだ。

 学校内の活動であれば、行き過ぎた指導があったとしても、管理職や担任、養護教員など、異なる立場の複数の目があるため、抑制が働きやすい。しかし、クラブチームでは監督の指示をチェックする機能は薄いとシゲルさんは感じている。

「少しでも子どもたちの心身に異常を感じたら、練習量を減らしたり、休養を取らせるクラブチームがほとんどだと思いたい。けれども、そうではなく、『試合に勝ってナンボ』のクラブチームも一部にはあるということです」(シゲルさん)

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